"夢の中から密輸しようとした話"
その夢の中で、私は「ある物」を現実の世界に持ち出そうとしていた。
その「ある物」は手の中に収まるほどの大きさで、夢の中でしか算出されない貴重な宝らしい。
その宝を手に入れた幸福感と、自分が夢の中にいるという冷めた気持ち、そして「夢の中の物を持ち出すという罪悪感」が入り混じり、
私は焦っていた。
どうやってこれを持ち出そう。
結局その方法を思いつかず、とうとうあきらめてしまったのだが、目覚めてから、
「密輸に失敗した残念な気持ち」が強く残っているのに、あれほど執着した「ある物」が何だったのか少しも思い出せないのだ。
-黒塚直子-