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2021/11/08

interview with Iku Dekune



銅版画家/画家である、出久根育による

初めてのドローイング作品の個展を開催することになりました。



28点の作品のモチーフは、

出久根の愛猫である猫と自邸の庭へ遊びにやって来る猫たちです。



2年前に娘と訪れた出久根のプラハ郊外のアトリエ。

窓の外に見えるプールと猫たちの遊ぶ広々とした庭、

作品の鮮やかな色彩が生き生きと瞼に浮かびます。



出久根は、猫たちに自分の感情を重ねることはせず、

ただその美しく愛しい姿をうつしとることを試み、

その美の本質とは何なのかを追いかけています。



ただ純粋に愛するという行為の難しさに、

わたしたちは人生の様々な局面で立ち尽くします。



愛を創作への静かな炎へ昇華させ、描くことに向き合い続けること。

絵からは画家のその真摯な想いが伝わって来ます。



あれから2年。

プラハへの旅の直後からわたしたちを取り巻く世界は

変容を続けていますが、

彼女は変わらずに描くことに向き合い続けています。



出久根育の描く生きるものへの優しい眼差しに、

この展示会でたくさんの方に触れて欲しいと願っています。






1 
製作の拠点をヨーロッパの中心であるプラハにされているのは何故でしょうか?

もともとプラハに住み始めたのは偶然ですが、
暮らしていくうちに、この国に魅了され、
心地よさを感じ、気がついたら20年が経っていました。
街のサイズ感がちょうどよく、あまり雑多な余計なものが目に入りにくく、
心地よく暮らせます。
また、非常に個性的な国であることも魅力のひとつです。



2 
アトリエではどんな風に1日を過ごされていますか?

アトリエといえるほどのスペースはないのですが、
部屋に机を二つ置いて仕事をしています。
ひとつは、ドローイングや自由に使えるように置いてある机、
もうひとつは、絵本のイラストを描くための机です。 
朝は猫の絵(または、気分で点や線、思いついたもの)を数枚描いてから、
絵本の仕事をします。
長い時間ずっと描いていると体が凝ってしまうので、
台所に立ったり、洗濯物を干したり、
庭に出て花の世話をしたり、近所へ買い物へ行ったり、
ぐるぐると仕事の合間に雑用をしながら、夕方まで絵を描いています。
夕飯の後、また部屋に戻って、締め切りが近ければまた絵本の仕事をしたり、
文章を書くことや、調べもの、ドローイングなどをしてから寝ます。


3 
個展タイトル「サビンカ」について教えてください

わたしの飼っているさび猫の名前です。
プラハに来てから3匹目の猫で、
ちょうど1年前に我が家に迎え入れました。
愛しているところに美があるから猫を描く、
というようなことを猪熊弦一郎さんがおっしゃっていたようですね。
まさにその思いです。
それをずっと描くことで見えてくるものをしっかり描きたいと思っています。
その他、庭にやってくる馴染みのある猫や、
去年まで18年間一緒に暮らした黒猫ドラの絵などもあります。




4 
現在は母校である武蔵野美術大学で、
客員教授として教壇に立たれることもあると伺いました。
アーティストとして、新しい世代に伝えたいと思うことはどんなことでしょうか?

現在は、武蔵野美術大学は教えていません。
横浜美大で1日ゲスト講師のような形で、絵本のことなどを話しています。
今は若い世代が自由にのびのび活躍をしているのを頼もしい気持ちで見ています。
海外で活躍する若い人も増えている気がします。
日本はとくに、さまざまなことがすぐに社会現象になったり、
流行りや廃りがはっきりとしていることや、
ジャンルわけを明確にしたいという性質の強い国だと思うのですが、
そういうことにあまり関係なく、表面にまどわされないで本質的な捉え方、
表現をしてほしいな、と思っています。
みな違うし、多面性もあるし、そういうところを認めた上で、
その奥底につながっている普遍的なものを大切にしてもらいたいな、という気持ちです。


5 
創作の源になるものについてお聞かせください。


私の描きたいものはみんな、実物そのものの色や姿が美しくて到底描けないので、
描きたくない気持ちでもあります。
とても本物には近づけないので、いつもがっかりするからです。
でも、きれいだな、素晴らしいな、と思うところには、
色や形やコンポジションの目に見える美しさだけではなくて、
そのなかに存在する、目に見えない美しさや漂うものを追いかけていたい気持ちがあります。
そして、それは、それを見る自分の心でもあります。
いろいろなエッセンスをちょっとずつ吸い取って、
その蓄積で、なにか自分らしいものが描けたらいいな、と思っています。
描きたいというよりも、見ていたい、感じていたい、というほうが強いかもしれません。








Iku Dekune interview

https://www.deku.cz



1 

Why are you based in Prague, which could be thought of as the center of Europe?


I moved to Prague by chance, but gradually became fascinated with the Czech Republic and felt increasingly comfortable there… and now 20 years have passed!

I like the size of the city. There is not too much visual distraction and its comfortable to live in. And its unique character is one of the main reasons why this country attracts me.



2 

How do you spend a day in your studio?


Its not big enough to be called a studio, but I have two desks in a room.

One is for drawing and other stuff, and another is for picture book illustrations.

I make a few drawings of cats (or dots and lines, whatever comes to my mind), 

then I start working on picture books.

I get stiff shoulders after long hours of sedentary work, so I do odd jobs in between,

like cooking, drying laundry, taking care of flowers in the garden or going shopping. 

I work until the evening.

I go back to the room after dinner for more work on picture books (if the deadline is short), 

writing, researching or drawing, before bed.



3 

Tell us about “Sabinka”, the title of the show at Kasper.


Its my cats name. Its my third cat since I moved to Prague. I welcomed it into my life just a year ago.

Genichiro Inokuma said that he draws cats because there is beauty in what you love.

Thats how I feel. I want to draw what has lingered in my vision after having drawn for a long time.

I also draw cats who often visit my garden, and a black cat named Dora I lived with for 18 years.




4 

 I heard that you have taught at your alma mater, 

Musashino Art University as a visiting professor. 

As an artist, what do you wish to tell to the next generation?


I dont teach at Musashino Art University now, 

but I talk about picture books at Yokohama University of Art and Design as a part-time lecturer.

Its so nice to see younger generations being freely active. More people are active overseas.

In Japan, things come and go so quickly and this transition is apparent, 

and I feel people have a tendency to classify things in terms of genre.

But I wish young people to capture and express the essence of things 

without focusing on such superficial aspects.

All people are different and multifaceted. I wish for them to accept that, 

and embrace the universality connected deep inside.




5 

What is your source of creativity?


All the things I want to draw have shapes and colors that are too beautiful to draw, so, at the same time, I dont want to draw.

Im always disappointed because I cant get it closer to reality.

But, things I find beautiful or fascinating have beauty inside as well as in their color, shape and composition, and I feel like going after this. At the same time, it is my mind that sees it.

I would like to draw something that is very me’, by absorbing and accumulating various essences little by little.

I might want to keep watching and feeling rather than want to draw.









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