去年の秋、郡山で開催された「ただようまなびや 文学の学校」に参加した。
カスパールをリニューアルオープンする前に、わたしはどうしてもこの学校へ参加したかった。
一泊二日で行われたこの学校では、古川日出男さん、川上未映子さん、華雪さん、豊崎由美さん、特別ゲストの村上春樹さん、さまざま書き手が登壇し、講義やディスカッションが行われた。
一日目の講義が終わった後、家族と離れて一人になるのは久しぶりで、福島のビジネスホテルのベッドの中ではいつもでも寝付けなかった。
部屋の窓からは、灯りのない郡山駅が見下ろせた。
目が冴えて眠れないので、ベッドの中で自分が受講する書評講座の課題だったレアード•ハントの「優しい鬼」を読み返した。
色々な物語が入れ子のように内包されている小説。
暴力によって逃げ場のない状況に置かれた主人公が生きるために、自分の心を想像力を使って解き放とうとする場面が描かれる。
遠くから聞こえてくる小さな声がいくつも絡み合い、悲しみや憎しみが昇華していく様がまるで歌声のようで、哀切な物語だった。
読んだ場所と小説が自分の中で固く結びつくことがある。「優しい鬼」を読み返すとき、夜の郡山駅がまぶたに浮かぶ。
「文学の学校」では、朝の朝礼があった。二日目の朝礼の時間、ホールで着席したわたしたち生徒の前で、柴田元幸さんとアメリカから来日されていたレアード•ハント氏の詩の朗読が始まった。
詩は、日本語・英語と一文節ごと交互に読まれた。会場の誰もがきっと知っている詩。宮澤賢治の「雨ニモマケズ」だった。
その詩はわたしのたちのよく知っている詩だけれど、二つに重なり合うことばは全く別のいきものにように耳へ流れ込んで来て、遠い場所へ運んでくれた。詩は時間を変容させるのだと、この場所でこのことばに出会いたかったんだと思う前に、涙が吹きだした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
明日、カスパールで行われる「海辺の朗読会」では柴田元幸さんと小島ケイタニーラブさん、伊藤豊さんが朗読と音楽のセッションを行います。
前半は店内で、後半は一色海岸で。
小島ケイタニーラブさんは、リニューアル前のカスパールの小さな小さな空間でもライブを行って下さいました。
二度目のライブがどんなものになるのかとても楽しみです。
自然の中でみなさんと自由に心を解放出来るような体験が出来ることを願っています。
店内には柴田元幸さんが責任編集を勤める「MONKEY」をはじめ、スティーブン•ミルハウザーの「魔法の夜」など柴田さんの翻訳された本の特設コーナーもあります。
併設ギャラリーでは、sunshine to you!の展示「A LONG VACATION」も開催中です。ぜひご高覧ください。